未知の世界だった「イスラーム」が、「わたし」に重なるまで~Canaryさんの改宗体験記

アッサラームアライクム。

今回は、改宗されてから3年目で、パキスタン系イギリス人の夫と日本で暮らされているCanaryさんにお話を伺いました。



イスラームとの出逢い

ーまずは、Canary(かなり)さんとイスラームとの出逢いについて、聴かせてください。

イスラームについてはそもそも全く知らず、というかちゃんと意識して向き合ったことがなくて。

調理師専門学校を卒業しパティシエの仕事をした後、カナダにワーキングホリデーに行き、日本に帰国してから英語で話す機会を求めて参加した国際交流ミートアップの場でパキスタン系イスラム教徒(今の夫)と知り合ったのが、きちんと「イスラーム」というものの存在を認識したきっかけでした。

ーその時は、イスラームにどんな印象をもっていましたか?

全く無知だったので印象といったものがなく、特に怖いなどとも思いませんでした。

「なんだか違う世界の話?」という感じでしたね。

でも、その後インターネットで調べてみると、怖いイメージを与えるような情報が色々と出てきたので、抵抗を感じるようになりました。

ミートアップで出逢い親しくなった彼に色んな質問をしては丁寧に答えてもらって納得することを繰り返しており、彼の人柄の良さもイスラームから来ているところがあるのだろうな等とポジティブに思ったりしながらも、身近に他のムスリムが居なくて、モスクに行くことにも抵抗があったので、ひとり悶々と考えることが多かったです。

 

―そこからどのように、イスラームについての考えが変化したのでしょうか?

悩みながらも彼との将来も考え始めていた時に、偶然、改宗ムスリマの方がInstagramでムスリムになった経緯を漫画で描かれたものを読み、その方に「改宗を迷っている」とメッセージを送って相談しました。

「大切な人と今後も一緒にいるために、イスラム教に入るか迷っています。どう思いますか?」

と聞いたところ、

「相手のためにではなく、自分が心から納得して入った方がいいと思います。そうでないと後々自分自身がつらくなってしまうからです」

とのお返事をいただいて、もっとイスラームについて知ってみよう、考えてみようという気持ちになりました。

クルアーンを読んでもみましたし、自分の「信仰」についても考えてみました。

そして、マレーシアというムスリムカントリーを含む東南アジアに旅行したことも、日本にいるとピンとこない様々なことが身近になった良い経験でした。

モスクは心が落ち着く雰囲気だったし、そこでお祈りしている沢山の人々の信仰心に触れて、「なんだかイスラームの雰囲気って、いいかも!」と思うようになりました。

旅行で訪れたシンガポールのアラブストリートにあるサルタン・モスク

 

改宗のきっかけ

―その後イスラームに改宗するに至ったのは何がきっかけでしたか?

新型コロナの影響が広がり、社会の様相も毎日の生活もガラッと変わってしまったことが大きかったです。マレーシア旅行から日本に戻った矢先のことだったのですが。

閉塞的に様変わりした社会のなかで、「人生迷子だ」「この先どうしよう…」と、精神的に滅入ってしまいました。

これがきっかけで、年齢的にも結婚して生活を安定させたいという気持ちと、何より不安定な社会のなかで心の平安を求める気持ちが強くなったんです。

何か絶対的に安定したものを拠り所にしたい、と思った時に、それが「神さま=アッラー」だ!と思い至りました。

わたしは元々、困り事があるときなど、家でも心の中で神さまにお願い事をしていました。

これは色んな神様というわけではなくて、具体的なイメージは無かったものの「ひとつの神様」だったので、イスラームに入信するときは、それまでの自分の中の神様に、「イスラム教に入りますが、今まで信仰していた神様がアッラーでありますように。」と伝えました。

 

―どこで、どのように改宗しましたか?その時は、どんな気持ちでしたか?

東京ジャーミィでシャハーダ(信仰告白・イスラームへの入信)とニカー(結婚式)をしました。

シャハーダの時は複雑な気持ちでしたね。「本当にこれでいいのか?」と今後への不安がありながらも、「これで安定したものを信じられる」という安らぎもありました。

とにかく、「えいっ」と勢いで決断した感じでした。

今考えると、4年近くも悩んでいた期間がありましたね。

 

―改宗するときに、悩んだことや心配したことはありましたか?

食事です。食べられないものが増えることを心配しました。最初は食べられる食材を探すのに苦労しましたが、今は慣れてきたので大丈夫です。

完全にハラール(イスラームで”良い”とされる)食事ができるようになるには数年かかりました。豚肉・お酒は改宗してすぐに食べるのを止めましたが、鶏・牛についてはハラール食品が手に入りやすいイギリスでしばらく生活したことで慣れて、その後日本に帰国したあともハラールのものしか食べないようになりました。

それから、服装。ヒジャブはモスクに行く時などはつけていますが、普段は帽子をかぶったりして髪を隠すようにしています。しばらく滞在したイギリスではヒジャブをつけていて、信仰心が強くなって戻ってきたので、日本でも普段からつけたい気持ちはありますが、やはり周りにムスリムが居ない環境では中々難しいなと感じています。

家族や友人には、イスラームについて普通に話をしていましたし、特に反対されたり心配の種になるようなことはありませんでした。

改宗した時期に撮った桜の写真

ラマダン中に夜のおやつに食べていたデーツボール

 

改宗後の変化について

―イスラームに改宗して良かったなと思ったことはどんなことですか?

気持ちが不安定にならなくなったことです。これは、アッラーという、絶対的に信じられる存在があるところが大きいです。

イライラしているときも、冷静でいられるようにもなりました。

 

―信仰が深まった経験や、振り返って改宗の伏線だったと思う経験はありますか?

複雑な家庭環境で育ったこともあり、昔から心が不安定になりやすかったのですが、そういう環境で育ったからこそ安定の源を探し求め、イスラームに辿り着くことができたのだろうなぁと思っています。

改宗後、ラマダン中に再度マレーシアを訪れ、ムスリムとしてピンクモスクでお祈り。

 

ムスリマとしての今と、これから

―ムスリムとして大切にしていることは何ですか?

悪口を言わないことなど、日々の心掛けです。

 

―イスラームの好きなところは、どんなところですか?

筋が通っているところ!

例えば、日本には「何のためにこの世を生きているか?」という問いの答えを持っていない人が多い。ムスリムはイスラームのお陰で、なぜこの世があるかを理解しています。だから、たとえ辛くても自殺しようなどとは思わないし、苦しみにも耐えられるのだと思います。

 

―ムスリムとして今後どう在りたいですか?

理想像は、ヒジャブをつけるのに抵抗がなくて(これは日本という環境の問題かもしれませんが!)、もっとクルアーンなどを積極的に読めるムスリマです。

イギリスの義両親などの家族は、皆が普段から頻繁にクルアーンを読んでいて、それがすごいなぁと思いました!

イギリスにいるときに、同じく改宗したムスリマの方にもらった英訳付きクルアーン。

 

インタビューを終えて

4年もの月日をかけてイスラームと向き合われたCanaryさん。自身のなかで熟考し、しっかりと時間をかけて煮詰められただけに、お話を聴くなかで、シンプルで本質的なイスラームの性質にたくさん触れさせていただきました。

「自分は何者か?」という問いをほどいていった末にイスラームとぴったり重なった、そんな過程ごと大切に抱き締めたくなるような、心に沁み入るお話でした。

CanaryさんはNoteでも改宗までの道のりのお話をもっと詳細に書いておられます、是非読まれてみてくださいね。

 

(2025.7.13 / 聞き手・編集 Nanami)

 

【語り手プロフィール】

Canary(かなり)

2022年にイスラム教へ改宗。

趣味はハラルやヴィーガンフードのお店巡り、料理やお菓子作りです。

たまにイラストも描いています。

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