回り道の先にあった、シンプルなイスラーム~ハニ・アブドゥル=ハーリクさんの改宗体験記
アッサラームアライクム。今回は、一神教の考え方に共鳴されてキリスト教に入信した後に、イスラームに改宗されて7ヵ月になるハニ・アブドゥル=ハーリクさんにお話をお聴きしました。
── まず初めに、簡単な自己紹介をお願いします。
ハニ・アブドゥル=ハーリクです。今年の5月にオンラインでシャハーダを行い、ムスリムになりました。
── イスラームとの出逢いは、どのようなものでしたか?
一番初めはおそらく高校のイスラーム史で、本当に表面的にイスラームというものの存在を知ったように憶えています。 古代エジプト文明に魅力を感じていたため、大学では中東方面について学び、その中でアラビア語に接したことをきっかけにイスラームの文化や建築に関心を持ち始めました。
その頃はまだ、イスラームを信じようとは考えていませんでした。
── では、その後どのようにしてイスラームに辿り着かれたのでしょうか?
祖父母の死をきっかけに、「死」について考え始めたことが、大きかったです。
神道だと、人間は死んだら神さまになるというようなニュアンスですが、これに違和感があり。
それまでも、死後の世界はあると何となく思っていたのですが、色々考えたり学ぶうちに、一神教の考え方が正しいと思うようになりました。
── それで、ムスリムになられたのでしょうか?
実は、はじめは生活の変化(礼拝や食事のことなど)を考えたときに、イスラームは難しいかな?と思ってしまい…でも一神教を信仰したかったので、2023年にキリスト教に入信したんです。
しかし、キリスト教について勉強したり聖書を読んだりするなかで、「人(イエスさま)が神である」という考え方のもとに身を置きつづけることに納得がいかなくなりました。わたし自身、イエスさまは神自身ではなく、”神の言葉を伝える預言者の一人である”というイスラームの考えが正しいと感じていたので。
更には、信じているだけで救われるのではなく、崇拝行為をしたり、善行を積もうと行動したりと身体を動かすことが徳(ハサナート)に繋がるという考え方だったり、善いことをすると天国に行けるけれどアッラーに背くことをすると地獄に落ちるというイスラームのシンプルで本質的な考え方が腑に落ちました。
そうこうしているうちに、特別な出来事があったわけではないけれど、改宗したいという気持ちが高まって実行するに至りました。勢いにのってしまった部分もあるかもしれませんが、これが神さまに導かれるということなのか!と思ったりもします。
クリスチャン時代にに読んでいた聖書。イスラームと繋がっている内容もあるので、今でもたまに開きます。
暮らしの中で使っている、イスラームにまつわる持ち物たち。
── 前に述べられていた、イスラームへの改宗にあたっての生活の変化の心配事は、どうなりましたか…?
今でも生活の中で難しいなと感じることはあります…仕事中の礼拝や、両親をはじめ周りの方々との付き合い方など。
職場には改宗について話していないので、お昼休みにジャム(2つの礼拝をまとめて行う)で済ませたり、もちろん親は大事にしたいけれど今はまだ改宗を打ち明けにくいので、少し距離を取ってイスラームの教えを守れる環境に身を置きたいとも、考えています。
── 改宗してよかったと感じることは、どんなことですか?
信仰を同じくする仲間ができたことです!東京ジャーミイで定期的に開催されている、ムスリムだけでなく誰でも入れるマジリスは、哲学的なことも話せる貴重な場でもあります。
気持ちが楽になった面もあり、それは、イスラームを信じるようになってから、確かに来世があると考え、天国に行くためにがんばろうと思えることに由ります。
以前は自分は何のために生きているんだろうと考えたこともありましたが、来世というゴールが定まったことで、人生で起こる色々なつらいことも、ゴールに辿り着くための試練だと意味を見い出せるようになりました。
例えば、会社の面接に落ちても、アッラーがこの道には進むなと止めてくださったのだなと思えるようになりました。
── 改宗してから大変だなぁと感じていることは、ありますか?
イスラームに則った食生活が大変です。自分では何とかしようという気持ちがあっても、信仰を打ち明けられない状態で家族と暮らしていることもあり…。
完全ハラール食にはできていないけれど、できる限りハラール食に向かうようには心掛けています。
休日に食べることがある、ハラールのラーメン。
和食には、ハラール認証を取得したしょうゆ。
── 今になってみて、イスラームの印象はいかがですか?
クリスチャンだった経験もあるので、聖書と繋がっているなあという印象が強いです。
イブラーヒームの宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラームのどれか一宗派ではなく、それ以前からある純粋な唯一神信仰)の完成形であり、しかもシンプルで、初めての人にもその概念がとても理解しやすいのがイスラームだなと。
── 現代において一般的に、イスラームは難しい・厳しいと思われがちですけれど…その誤解から抜け出すためには、どうすればいいと思いますか?
異文化交流と同じで、いちど体験してみるのがいいと思います。 例えば、大阪のジャパンダアワセンターなどは、ウドゥーなどイスラームに関する行動を実際に先生に見せて教えてもらったり、体験することができるような一般の方が参加できるイベントを行っているそうです。
また、東京ジャーミイさんは”礼拝の仕方”など色々なテキストを発行されています。イラストもあってわかりやすいし、ちょっとやってみよう!と気軽にイスラームに触れることができます。
それから、朝起きてファジュルの礼拝の前に冷たい水をかぶると、とっても気持ちがよくてスッキリする!というような経験を一緒にしてみたり、例えば川口湖のほとりのような自然の美しい場所で礼拝をしてみるというのも良いかもしれません。
そもそも礼拝っていいことなんだ!と感覚的にわかってもらえると、「実はイスラームってシンプルなんだ」と伝わりそうです。
また、モスクが和風の建築だったらもっと日本に馴染む、日本人が親近感を抱けるのではないかと思います。中国のモスクなんかは、お寺のような見た目のものが多いんですよ。
(異国の建築のモスクも美しくはありますが、)日本において、モスクを見て異文化を感じてしまうという現状には、違和感を持っています。
東京ジャーミイで配布されている、イスラームについて学べるテキスト。
ジャパンダアワセンターの方に頂いたクルアーン。アラビア文字に触れたい時に開きます。
── 最後に、ムスリムとして大切にしていることや、これからどういう風に生きていきたいかということを、お話しいただけますか?
まだムスリムになったばかりなので、勉強をしていかないといけないことが沢山あるんですけれど…
とにかく、アッラーに喜ばれる生活をしていきたいです。 お祈りの前にも、”アッラーのご満悦のために(祈ります)”ということをニーアのときに入れるように心掛けています。 アッラーに喜ばれることを目指して生きることが自分の幸せにも繋がっていくのだと、確信しています。
編集後記
自分にできそうなことから始め、一歩一歩進む。 学びを深めながらも、心に生まれる違和感に蓋をせず、誠実に向き合い続ける。 その積み重ねの先に、アブドゥル=ハーリクさんがご自身のペースで辿り着かれたのが、イスラームでした。
回り道に見える時間さえも、理解を深める糧として大切に受け止める――そのお姿からは、無理のある飛躍よりも、納得しながら進むことの確かさが、自然と伝わってきます。
(2025.12.20 / 聞き手・編集 Nanami)
【語り手プロフィール】
ハニ・アブドゥルハーリク
「純日本人(日本生まれ、日本育ち、日本語話者)」のムスリム。
生まれからイスラームに適応するのに苦労をしていますが、アッラーを信頼して人生を生きていこうと思っている33歳児です。